「子供の歯並びが悪くて心配」
「周りの子が矯正を始めているけど、うちの子もすぐに矯正が必要?」
お子さんが成長していくとともに、歯並びが気になり始めた親御さんも多いですよね。学校の歯科検診で指摘を受けたり、前歯が生え変わる時期に歯並びの悪さに気づいたりすると、不安になるものです。
実は、子供の歯並びが悪くなる原因の約7割は、日常の生活習慣や癖によるものです。遺伝だけでなく、口呼吸や指しゃぶり、柔らかい食事中心の食生活など、改善可能な要因が大きく影響しています。
歯並びの悪さを放置すると、虫歯や歯周病のリスク上昇や咀嚼機能の低下などにつながるため、状況に応じて適切に処置することが大切です。
本記事では、子供の歯並びが悪くなる原因や、歯並びの悪さを放置すると起こるリスクなどについて解説します。
目次
子供の歯並びが悪くなるおもな5つの原因
子供の歯並びが悪くなる原因は、遺伝的要因よりも日常の生活習慣や癖による影響が大きいです。ここからは子供の歯並びが悪くなるおもな5つの原因を解説します。
①口呼吸による上顎の発育不足
本来、人は鼻で呼吸するようにできていますが、アレルギー性鼻炎や口を開ける癖が続くと、口呼吸が習慣化してしまいます。
口呼吸が続くと、舌が正しい位置(上顎の天井部分)に収まらず、下がってしまいます。本来、舌は上顎を内側から支える役割を持っていますが、舌の位置が下がることで上顎を支える力がなくなり、上顎の発育が不足してしまうのです。
その結果、歯が並ぶスペースが狭くなり、歯がガタガタに生える叢生(そうせい)や、上顎前突(出っ歯)、開咬(前歯が噛み合わない状態)の原因となります。
②指しゃぶりや舌癖による歯への圧力
指しゃぶりは、乳幼児期には自然な行動ですが、3〜4歳を過ぎても続いている場合は注意が必要です。指で前歯を押す力が長期間かかることで、上顎前突(出っ歯)や開咬を引き起こします。
また、舌を前に出す癖(舌癖)も歯並びに悪影響を与えます。食べ物や唾液を飲み込む際に舌で前歯を押す飲み込み方が習慣化すると、弱い力でも長時間かかることで歯は動いてしまいます。
③柔らかい食事中心による顎の成長不足
現代の食事は、ハンバーグやパスタ、パンなど、あまり噛まなくても飲み込める柔らかいものが中心になっています。柔らかい食事ばかりを摂取していると、噛む回数が減り、顎の骨に十分な刺激が伝わりません。
成長期の子供の場合、よく噛まないことで顎の骨が小さく未発達なままになってしまいます。小さな顎に大きな永久歯が生えてこようとするため、スペースが足りずに重なり合って生えてくる叢生の原因となってしまうのです。
④頬杖・うつ伏せ寝による顎の歪み
頬杖をつく癖やうつ伏せ寝は、長時間同じ方向から顎に圧力がかかるため、顎の骨格に歪みを引き起こします。交叉咬合(歯列の途中が交叉している状態)や、左右非対称の歯並びの原因になります。
とくにスマートフォンやタブレットを使用する際の姿勢が悪いと、無意識に頬杖をついてしまうことが多いです。また、片側だけで噛む癖も、顎や歯に偏った負荷をかけ、歯列の乱れを引き起こす場合があります。
⑤遺伝的要因
遺伝的要因も歯並びに影響を与えます。親から子へ遺伝するのは、顎の大きさや歯の大きさ、骨格のバランスなどです。
たとえば、小さな顎に大きな歯が生えてくる場合、歯が並びきらずにガタガタになってしまいます。逆に、大きな顎に小さな歯が生える場合は、歯と歯の間にすき間ができるすきっ歯になる場合があります。
また、受け口(下顎前突)や出っ歯(上顎前突)などの骨格的な問題は、遺伝的要因が強く関与していることが多いです。
子供の歯並びを放置すると起こる5つのリスク
子供の歯並びの乱れを放置すると、見た目の問題だけでなく、口腔内の健康や全身の発育、心理面にまで悪影響を及ぼす可能性があります。ここからは子供の歯並びを放置すると起こる5つのリスクを解説します。
①虫歯・歯周病になりやすくなる
歯並びが悪いと、歯が重なっている部分や歯と歯の間に歯ブラシが届きにくく、磨き残しが増えやすくなります。その結果、虫歯や歯肉炎のリスクが大幅に高まります。
とくに歯が重なり合っている叢生の場合、どんなに丁寧に磨いても完全に汚れを落とすことが難しいです。また、出っ歯や開咬で口が閉じにくい場合、口腔内が乾燥しやすくなり、唾液の自浄作用が低下します。
唾液には、口の中を洗い流したり、細菌の繁殖を抑えたりする重要な役割があります。口腔内が乾燥すると、この自浄作用が十分に働かず、虫歯や歯周病のリスクがさらに高まります。
将来的には歯周病へと進行し、歯を失う原因にもなりかねません。
②咀嚼機能の低下で消化不良や栄養吸収に影響がある
歯並びや噛み合わせが悪いと、食べ物を十分に噛み砕くことができず、咀嚼機能が低下します。咀嚼が不十分なまま飲み込むと、胃腸に大きな負担がかかり、消化不良や栄養吸収の低下につながります。
とくに開咬(前歯が噛み合わない状態)の場合、麺類などを前歯で噛み切れません。その結果奥歯ばかりを使うことになり、奥歯がすり減ったり割れたりするリスクが高まります。
また、硬い食べ物や粘りのあるものを噛むのが難しくなると、無意識に食事の選択肢が狭まり、柔らかいものばかりを選ぶようになります。これにより栄養バランスが崩れ、健康状態の悪化や成長の遅れを招く可能性が高いです。
③発音が不明瞭になり言語発達に支障が出る
歯並びは発音にも大きく影響します。とくに「サ行」や「ラ行」の発音が不明瞭になりやすく、コミュニケーションに支障をきたしかねません。
出っ歯の場合は、舌と歯の位置関係が正常と異なるため、舌足らずな発音になりやすくなります。受け口の場合は、下顎が前に出ているため、サ行やタ行の発音が難しいです。
子供の時期は言語発達の重要な時期です。発音の問題が続くと、学校生活や友人関係にも影響を及ぼす可能性があります。
④顎関節症の原因になる
噛み合わせが悪い状態が続くと、顎の関節や筋肉に過度な負担がかかり、顎関節症を引き起こすおそれがあります。顎関節症になると、口を開けるときに音が鳴ったり、痛みを感じたりします。
子供の頃に顎関節症になると、顎の適切な成長が妨げられる可能性が高いです。また、口呼吸により睡眠の質が低下し、成長や学習にも悪影響を及ぼすケースもあります。
⑤コンプレックスを感じてストレスにつながる
歯並びが悪いことは、見た目の問題として子供の心理面にも大きな影響を与えます。歯並びを気にして、笑顔を見せなくなったり、人前で話すことを避けたりするようになりかねません。
とくに思春期に入ると外見を気にする年頃になり、歯並びがコンプレックスとなって自信を失い、積極性が失われてしまうケースも多いです。
歯並びのコンプレックスは、大人になってからも続くことが多く、就職活動や対人関係にも影響を与えるおそれがあります。子供の時期に歯並びを整えることは、健やかな心の成長を支えるためにも重要です。
【年齢別の目安】子供の歯並び矯正はいつから始めるべき?
子供の矯正治療を始める適切な時期は、歯並びの状態や顎の成長段階によって異なります。一般的な目安となる年齢と、それぞれの時期に適した治療内容を理解しておきましょう。
| 時期 | 年齢の目安 | 治療の特徴 |
| 乳歯期 | 3~5歳 | 受け口や開咬は早期相談がおすすめ |
| 混合歯列期 | 6~12歳 | 顎の成長を利用した治療が効果的な最適期 |
| 永久歯列期 | 12歳以降 | 永久歯が生えそろってから歯並びを本格的に整える |
【3~5歳】乳歯期:受け口や開咬は早期相談を
乳歯期は、まだすべての歯が乳歯の状態です。「乳歯は抜けるから矯正は必要ない」と考える方もいますが、骨格的な問題がある場合は早期の対応が重要になります。
とくに受け口(反対咬合)は、3歳頃から治療を開始することが推奨されています。受け口を放置すると、下顎が過度に成長してしまい、将来的に外科手術が必要になる可能性が高まります。
また、開咬(前歯が噛み合わない状態)も、指しゃぶりや舌を出す癖が原因の場合、早めに癖を直す指導を受けることで改善可能です。
【6~12歳】混合歯列期:矯正の最適なタイミング
混合歯列期は、乳歯と永久歯が混在している時期で、小児矯正の第一期治療をおこなう最適なタイミングです。一般的に、上下の前歯4本ずつ、合計8本の永久歯が生え揃った6〜7歳頃が治療開始の目安とされています。
この時期は、顎の骨が柔らかく成長途中であるため、顎の幅を広げたり、顎の成長方向をコントロールしたりする治療が効果的です。拡大床などの装置を使って、永久歯が正しく生えるためのスペースを確保します。
顎の成長を利用した治療により、将来的な抜歯のリスクを軽減したり、治療期間を短縮したりできるメリットがあります。この時期を逃すと、顎の成長を利用した治療ができなくなるため、適切なタイミングでの受診が重要です。
【12歳以降】永久歯列期:本格矯正で仕上げる
12歳頃になると、ほとんどの永久歯が生えそろい、顎の成長も落ち着いてきます。この時期におこなう治療が、第二期治療です。第二期治療では、ワイヤー矯正やマウスピース矯正を使って、歯並びや噛み合わせを本格的に整えます。
第一期治療で顎のスペースを確保していた場合、第二期治療では抜歯をせずに済むことが多く、治療期間も短くなる傾向があります。一方、第一期治療を受けていない場合は、歯が並ぶスペースが不足しているため、抜歯が必要になるケースが多いです。
大人の矯正治療と同じく、ブラケットとワイヤーを使った治療や、透明なマウスピースを使った治療などがあります。この時期は、本人の治療への意欲も重要になるため、親子でよく話し合って治療を進めることが大切です。
まとめ
子供の歯並びが悪くなる原因は、口呼吸や指しゃぶり、舌癖、食生活などの生活習慣によるものから、顎や歯の大きさといった遺伝的な要因まで、さまざまなものがあります。
歯並びの悪さを放置すると、虫歯や歯周病のリスク上昇や咀嚼機能の低下などにつながるため、お子さんの歯並びが気になる場合は、早めに歯科医院へ相談することが大切です。
また、矯正治療は「どの装置を使うか」だけで決まるものではありません。お子さんの歯並びや噛み合わせ、顎の成長などを踏まえ、どのような方針で歯並びを整えていくかという「治療の設計」も重要です。
近年では、見た目の歯並びだけでなく、噛み合わせの機能や口元全体のバランスまで考慮して治療方針を組み立てる考え方もあります。その一例として、複数の矯正方法を組み合わせながら、一人ひとりの状態に合わせて治療を設計する「機能美アライナー®」という選択肢もあります。
矯正を始める時期や適した治療方法は、お子さんの成長段階や歯並びによって異なります。焦って治療方法を決めるのではなく、まずはどのような選択肢があるのかを知り、お子さんにとって無理のない治療方法を歯科医師と一緒に検討していきましょう。
